大三島。
大山祇神社がある「神の島」としても知られ、愛媛県今治市にある芸予諸島の中でも最大の島である。
この島に、豊富な海の幸を超低価格で提供するお店がある…ということで、さっそく行ってみた。
そのお店の名は「大漁」。
開店前にも関わらず、既に数名のお客さんの姿が…。
とりあえず、玄関に置いてあるウェイティング帳に記載。
開店45分前にも関わらず、この時点ですでに4番目。
早い人はいったい、何時に来てたんだろか…。
開店までの間、目の前にある大山祇神社を散策。
天然記念物でもある、樹齢2,600年…と伝えられる御神木。
2,600年と一口に行っても、その月日の長さって言ったら途方もない数字。
雨上がりな感じと相まって、厳かな雰囲気漂う境内。
神と対峙する時は人間、なんだか妙に素直になれるもんだ…なんてふと、思ってみたり。
そんなワケで、いよいよ開店。
いつの間にやら、凄い人の数…。
事前準備の甲斐あって、開店と同時に入店。
ここの看板メニューは、380円の海鮮丼。
新鮮な瀬戸内の海の幸をふんだんに使った海鮮丼が、なんと380円という超低価格で食べれるという。
そんなワケで、さっそく注文。
握りも同じ380円ということで、安さにつられ、ついついこちらも注文。
待つこと5分。
遂に、380円海鮮丼とご対面。
やや小ぶりな器に盛られた海鮮丼。
これで380円は、かなりのコストパフォーマンス振り。
ネタも新鮮。
超美味し!
これだけの人を集める理由も分かるってなもんだ。
ほとんどのお客さんがこの海鮮丼を注文する中で、このお店、ほんとにやっていけてるんだろか。
採算は取れてるんだろか…。
普通だったらそう思ってしまうが、やっていけるどころか、超儲かっていると推測してみたりする。
その理由はこうだ。
この海鮮丼、実は丼だけで汁は付かない。
380円という安さに思わず気が緩み、そこに店員の「+80円でお汁をお付けしますか?」のオススメセリフが来たりすると、つい「付けてください」となってしまう。
実際、これまたほとんどのお客さんが+80円のお汁を付けていた。
この時点で価格は既に460円。
プラスで付けたお汁の原価なんて相当低いはずなので、海鮮丼だけではカツカツだったかも知れない原価が、この時点でかなり緩和され粗利が膨らむ。
商品戦略と接客との連携プレイがある意味、素晴らしい。
売上というのは、客数×客単価。
380円という海鮮丼で、まずはこれだけのお客さんを呼び込むことに成功。
次に手を付けるのは、いかに客単価を上げていくか?ということになる。
先ほどのお汁のように、プラスなにかしらのメニューを頼んでもらうことで客単価は上がるが、そこから先は、いかに素晴らしい接客術をもってしても、なかなか難しいところではある。
このお店では、数十種類の単品メニューを、メニューブックに掲載するのではなく、実際に調理を行った「商品」として、店内に並べてある。実はこれがこのお店の「客単価上昇」のための戦略なのだ。
380円という安さ(既に460円になってるけど)についつい気が緩み、そこへ来て目の前にこれだけの海の幸が並んでいるのである。しかも、散々待たされた挙句、やっと入ったお店。周りのお客さんが嬉しそうに一品一品持っていくのを見てたりすると、これがまた不思議なコトに、思わず自分も手を伸ばしたくなるのだ。そう、これを食べないことが、なんだかとてももったいないんじゃないか?という気持ちと共に。
ここで思わず、あなご天580円をGET。完全に術中にハマっている…。
この時点で、海鮮丼380円、お汁80円、勢いで頼んでしまった握り380円、あなご天580円、合計金額はなんと…!
1,420円!
380円の海鮮丼に釣られ、気付いたら1,420円もの商品を買ってしまった。
(…って言うか、握りはほんとに余計だった…)
もちろん、これだけの単品メニューを準備するだけの手間と時間は必要。
開店までに、相当な作業量があったはず。
聞くところによると、仕込みは朝5時からやっているとのこと。たしかにそれくらいの量と客数だと思う。
それでも、メニューブックに記載してある文字だけでは、これだけの単価を取ることは不可能だ。
注文を受けてから作るのか、事前に準備するのかの違いであって、逆に事前に作る方が、「待たせている」的な感覚がなく、心に余裕を持って調理するこが出来る。ピークとなっても、円滑に回転させることが出来る。
仮に、昼に単品メニューが残ったとしても、おそらく夜にまた同じように出すだろうし、売れ残りにならないよう、いろいろ工夫して売り切ってしまうに違いない。
しかもこのお店、箸袋に堂々と記載してある通り、水とか単品メニューの配膳とかは当然、セルフサービス。
客席が満席で60名程度入ったとしても、接客担当者は3名程度。これは相当生産性が高い。
余計な人件費も掛けていないってところが、隠れたポイントだったりする。
このお店が相当儲かってると思うワケは、こんな理由によるところだ。
ま、そんなことはウダウダ考えずに、食べたいものを好きなだけ食べるのが一番幸せなコトだと思うワケで、せっかく大三島まで行ったのならば、この島で取れた海の幸を思う存分食べて帰るってのが一番だと思う。
モノより思い出。
大三島でこんなの食べたなぁっていう思い出はきっと、プライスレス。
そんなワケで、次に行く時は絶対、海鮮丼だけで終わらせてやる…!